変態(完結編)

…ターニングポインヨになったトリガは、飴の購入だったと思われる。ある日わたしはガムとタバコを買うためにコンビニに入った。ところがわたしはガムではなく無意識で袋飴を選んでしまった。極上素材のスウィーツをちょこっと味わう幸せみたいな、カフェ気分の飴とは真逆、いろんな果物味を無尽蔵に蓄えた、ロートレンドな一番安い一袋の飴。移動中のバスの中でわたしはゴソゴソとリュックを開き、飴の袋を開けて林檎味を口に入れた。たちまち身体全体に染み渡る甘味に思いがけず幸福に包まれた。母に連れられて途中から乗って来た子供がピーピー泣いてうるさいので、一番上等の桃味をポイとやった。するとたちまち再び車内に平和が訪れた。
ゆうこ大満足。出来ることなら母親にも一つやりたかったが、当惑されるのは本意でないので調子に乗るのは止めておいた。これに味を占めてこの日はいろんなシーンで見ず知らずの子供に飴をやり、笑顔のお返しをいただきました。この歓びは、例えようの無いハレルヤな世界でした。
ちょっと前につくばの研究所に仕事しに行った時、タクシーを待ちながら(つくばでタクシーに並んでるのは研究者か薬屋の営業かエンジニアに決まってる…と思い込んでいた)、ゴソゴソとビニール袋を出して飴をしゃぶる中年女性に遭遇し、上記三者のどれにも当てはまらないその所作に当惑し、『おばさんは……かくあるべし』と勝手なオチをつけて納得したことがあった。結局おばさんの行き先はわたしと一緒の研究所だった。帰りのタイミングも一緒だった。守衛所前でタクシーを待ちながら、やっぱりゴソゴソと飴を口に入れていて再び当惑した(勝手に想像しちゃって大変ハラスメンシャルなんだが、おばさんここに何しに来たんだろ?と。)。
あれがわたしにとっての『おばさんにしか出来ない所作』の、一つの原風景だったことには間違いない。軽蔑に違い気持ちで眺めたその姿と、今わたしは同じように、公にゴソゴソと飴を舐めている。それに気付いた瞬間、わたしに二度目の生理が訪れたのだった。
わたしに覚醒をもたらした飴の名は『くだもの天国』。尽きることが無いとゆうエターナルに、人は天国を見るのかもしれない。
かくして私は一つの恐怖から解き放たれた。ガムより飴の方がオトクだな…とか発想した赤貧の状態でなければ浸ることの出来なかったこの幸福に、青い鳥をみるゆうこりんだったのだった。<完>
#このエントリーのタイトルのせいで、『おばちゃん 変態』でググって来てしまった人は、エッチな熟女が繰り広げる常軌を逸した恥態が一つも書かれていないことに憤慨するだろうなと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいです><今日は長くしゃべりすぎて…おばちゃん疲れちゃったワwwwwwちょっと休ませてwwwwwwwwww