亀は僕の体の一部

先週の話ですが、イモウヨが嫁いで行った門前町で賑やかなお祭りが催され、ちょっと行ってきました。町中がこの日のために生きているんだという熱気に溢れ、胴上げみたいに宙に舞うお神輿の群れ。大人たちは子供そっちのけで酒を飲み、子供たちは酔っ払った大人達からせしめた小遣いで大いに散財しています。中でも僕のイモウヨが自分と全く関係のない親父同士の喧嘩に乱入して、後ろから仲裁役に羽交い絞めにされて道にひっくり返っている姿は、まるで『盛り場警察24時』みたいな特番に出てくる酔っ払いの気の狂ったオバさんみたいでした。

さておき、中でも子供たちを熱狂させていた出店は亀すくいでした。最中の皮で水槽の中の亀をボールの中にすくい上げます。一回300円。3匹すくいあげることが出来なければ、亀を一匹も持ち帰ることは出来ません。ただし2回連続、600円払って遊ぶなら、すくえなくても一匹は確実に持って帰れる。ヤクザな子供たちは600円で一匹もって帰ることを喜ばず、3匹すくえなかったことを悔しがる。もはやここは娑婆ではない。気が付いたら財布の中の3万円が1万5000円になっていました。

田舎育ちの僕んちの女の子二人は、600円で一匹コースにすっかり満足してくれて、それぞれ一匹づつ緑亀を持ち帰りました。クックちゃんとポッケちゃんと名付けられた二匹は、まるで赤ちゃんみたいにだらしない姿で寝たり、水槽の石を蹴散らして遊んだり、声をかけるとニョキっと水から顔を出してこちらを見たりと、とても可愛いです。僕は亀が大好きなのです。

このお祭りの一週間前、僕は生まれて初めてスッポンを食べました。コース開始の合図になる生き血の日本酒割りは、それほど抵抗は無かった。肝の刺身のサクサクした歯ごたえは、ちょっとショックだった。一番ショックだったのは鍋。ぶっつりと切り落とされた頭と手が姿のまま鍋で煮えている。僕を連れて来てくれた男の人が、その亀の姿に唖然としている僕を、『どうだビビったか』と言わんばかりに嬉しそうにニヤニヤ見ている。この野郎、僕がどれだけ亀を好きか思い知らせてやる。僕はおもむろにスッポンの頭を口の中に放り込みました。リコーダーの一番そ上の膨らんだ部分くらいの大きさの頭は、口に入れても骨ばかりでしたが、くりくりした目玉や、とがった形の口が本当に生き物の顔で、全部を口に含んだ瞬間泣き出してしまいそうでした。しかしここで泣いては、あられもない姿で食卓に上ったスッポンに対して失礼。面白半分で私をスッポンに誘った男の人を睨みながら、丁寧に皮を舐り、あごの肉をそぎ落としてこれ以上食べるところがないくらいピカピカになった頭の骨をプッと吐き出しました。嗚咽しながら生き血を半分残した男の人が、『恐れ入りました』と頭を下げました。僕は頭を下げて欲しくて食べたんじゃない。亀が好きだから食べたんだ。と言っても理解しないでしょうね。

お店の人が、僕が口から出した頭の骨を素早く厨房に持って行き、甲羅と一緒に酵素の液に漬けて、さらにピカピカにしてお土産にしてくれました。

二十歳の頃、飼っていた亀を真夏一日中陽の当たる密室に水槽ごと置き去りにしてしまい、死なせてしまった経験があります。煮立って死んだ亀は、甲羅から両手両足しっぽ首全てをだらりと伸ばして、舌まで出して死んでいました。壮絶な死に顔でした。この亀を弔うためにも、僕はスッポンを残さず食べなければ次に進むことが出来なかったのです。この日、僕は確実に次のステージに進んだことを実感しました。




なんかこの日記、キ○ガイの人が書いたみたいですねwwwwwwwwwwうぇ