松涛の方で爆発があったようだが


僕はその頃久しぶりにばったり会った親友のR君と銀座9で小松菜ジュースを飲んでました。
お互い地元っ子なので、横浜に帰って飲むより珍しいアウェイで遊ぶのもいいかなあと思ってたのですが、R君が、ここまで来たからには会わないといけないという人がいるらしい場所を待ち合わせに指定して来て、行ってみると喫茶店で、僕はエスプレッソ入れるなんか太い棒みたいのが突き出したマシーンを生ビールのベンダーと勘違いして、お店に入るなり「生下さい」と言ってしまいました。喫茶店の中は薄汚いおじさんと持ち帰りのコーヒーをオーダーする髪の毛を塔のように結い上げた出勤前のホステスさんでてんやわんやしていました。てんやわんやなのに、マスターはR君に対する深い義理があるようで、私たちの代金を受け取ることを拒むのでした。
妻子もちのR君が、横浜に帰りたがるので長い道中ビールを我慢しながら東海道線に揺られました。R君は昼間の勤めをはじめてから半年が過ぎており、柔らかすぎるように感じていた人となりが、若干険しいものになっているような気がしました。僕達は静かに昏々と飲みながら、溜まっていた話をしました。R君の奥さんが、彼の帰りが遅いことに腹を立てて何度も電話してくるので、4杯ばかり飲んだところでお開きになりました。電車に乗ろうとしたら、R君が買物を命じられていることを打ち明け、買物に付き合って欲しいと言うので、ダイエーに食材を買いに行きました。奥さんのリクエストは、豚バラ、キャベツ、山芋をおろしてパック詰めしたもの、という3品だったのですが、僕は山芋がおろされてパックに詰められている商品を見たことがなく、難儀しました。それを見つけてこそ今夜の義理が立つものと、僕は必死で山芋パックを探したのですが、探す道すがら、主婦から見てかなりお買い得でユーズフルだと思えた乾燥芽ひじきお買い得パック98円と、九条葱98円を自分勝手に買い物かごに忍ばせたのでした。結局山芋パックはお店で取り扱われていないことが判明し、お買物を終えました。
僕はそこから更に電車に乗り、寝過ごすことなく最寄り駅で下車し、バスも無いし、酔い覚ましついでに歩いてみたのですが、いくら歩いても知らない道がどんどん細くなっていることに気づいて、向こうから歩いてくる女の人に、この道はどこにいくのかと尋ねると、僕んちと全く逆方向だったのでした。女の人は親切に、タクシーを呼んでやろうか?道は分かるのか?と世話を焼いてくれたのですが、どうせ一本道ですので、大丈夫ですwと照れ笑いでお礼をして別れました。いよいよ家が見えてくるあたりまで来ると、突然ウンコがしたくなりました。誰もいない真っ暗な畑の真ん中でウンコしたらさぞ気持ちいいだろうなと、それを翌朝隣の犬が嗅ぎつけて、僕のマーキングウンコを敬遠してくれたら、ことさらに気持ちがいいだろうなと思いに耽っていたらやがて家に着きました。家に着いた途端ウンコが引っ込んでしまったので、手持ち無沙汰に日記を書こうと思い立ち、そこで今日の渋谷の爆発事件を知り染めたのです。